反<絆>論 著 中島義道:「絆」がテーマであり、Nテーマも【絆】です。あなたの悩み……もしかしたら無意識に肯定してしまう”絆”の仕業かもしれません。

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その他

こんな方にオススメ!

人の優しさがなんかつらい……と思う方

自分が少数派だと思っている方

これだけは絶対に正しいと思うものがある方

結論:「これだけは否定しない」というものほど、一度見直せば大きなチャンス、あるいは現状打破のヒントがあるのかもしれません。

最初に

つないだ手のイラスト

「絆」

これほど尊くて、これほど強いものはないと言える存在の一つです。普段の何気ない日常でももちろん、非常に苦しい時、辛い時に特に「絆」の力は重要視されます。

親子の絆、兄弟の絆、友達の絆、恋人の絆……人と人が関わり合いになる以上、いつだってそこには絆があります。何気ない日々ただ過ごす関係だったとしても、気がついたら結ばれたり離れたりするもの……野生の動物たちにも絆を感じることがあるので、人の力というよりは生命の力と言っても過言ではないのかも知れません。

しかし、「力」は「力」である以上、決して正しいことだけの使われるとは限りません。

制御できない「力」は無意識に自分で自分のことを傷つける原因になったり、あるいは誰かに偽装されて、支配される原因となるのです。

最も、”絆”などの肯定的なものに隠されてしまうとなかなかわからないのが困ったものです。

さて、今回の本は、そんな時に役立つ本です。

哲学、そして著者の考えや経験の側面から現代の絆、そして絆が関係するような感情の持つ危険性やあるいは利己性などを追求し、どうして絆に苦しめられるのかを教えてくれる本です。

主に著者の考え、そして偉大なる哲学者達の分析をバランスよく取り入れており、決して難しくならず、かといって安直な回答でもないちょうどよい塩梅で考えを変える助けになるでしょう。

万人にオススメできるかと言われると正直、あまりおすすめできない人もいます。特に、「どちらかというと自分は周りと意見がよく合う方だ」という方は体調が良かったり、あるいは別の何かを受け入れる余地がある時に読むと新しい考えが生み出せるかも知れません。

逆に「自分はたびたび周りの人と意見が合わない少数派だ……」と苦しい思いをしている方はもしかしたら悩みの前提から見直すことができるかもしれません。

それから誤解しないでほしいのですが、著者は絆を全否定しているわけではありません。本の端々で、絆の持つ力を信じていたり、感動したという経験も語っています。

この本のおすすめポイント!

全肯定をなくせる

全肯定を悪いものと思っていない方も多いですが、非常に危険さを秘めている考え方です。なぜなら、何かを全肯定してしまうと、依存、あるいは別の何かを全否定することに繋がってしまうからです。

よく言われることとして、「相手の全てを愛せ」と言われたりしますが、「相手の全てを肯定しろ」というのはまた違います。

でも、自分は全肯定なんてやってない!と思っている方に質問です。

本当に全肯定していませんか?愛、絆、勇気、優しさ、努力……そういった否定されることがめったにないものも、ちゃんと否定要素を見つけることができますか?

『反<絆>論』では、そういったよく無条件で全肯定してしまいがちになるものが生み出す弊害、痛みなどを哲人の名言、著者の経験、そして実際に起こった出来事から危険性を訴えることで何も考えなければ無条件で信じてしまいそうなものを疑う力を身につけてくれます。

例えばあなたが今、助けたいと思っていて、でも今まで誰も助けることができなかった人に対して、人が抱きがちな全肯定をなくせれば、突破口になる可能性があります。

無意識に全肯定してしまい、無条件に受け入れてしまうからこそ、何が苦しいのかわからず、何が悪いのかもわからず、ただ痛みだけを蓄積する日々を送ることになりうるからです。

全肯定されるものを少しだけ否定できるようになれば、それだけ広がる可能性は存在します。もちろん少なからず否定することは痛みは伴いますが、同じように痛みを受けるのならば、解決する方に力を注ぎたいものです。

それからわずかでも、否定的に見るというと、悪い印象を抱く人も多いかも知れませんが、ポジティブとネガティブの2つの側面を見ることができれば、いわゆる”調整”ができます。

そして、他人に押し付けられる立ち位置ではなく、自分にとって心地よい場所を再検討できるのです。冒頭でも話したとおり、特に世間一般的に言われる「大多数の意見」と合わない人には特にこの「調整」は重要になっていきます。

多くの人が無意識、無条件で信じてしまうものならばなおさらです。

当本はそのための多いなる助けになるでしょう。

少数派としての強みを学べる。

いつだって少数派、マイナー勢はつらいものです。私も昔からゲーム好きではありましたが、メジャーなものではなく、マイナーゲームばかり好きになって人と話を併せられずとことん話題を探すのに苦労しました……。

そして、絆という大多数の人が賛同、もしくは崇拝しているものを”反する”テーマをつけているだけのことはあり、著者の方が自伝的に物事を語るときは大体は少数派としての意見であり、そして考えた結果の利点を教えてもらえます。

しかし、苦しみを寛容に受け入れることができれば、他の人にはない、一つの力、そして様々な物事の見方を受け入れることができます。

「世間一般論」要するに大多数の意見で打ちのめされることで、「世間一般論」も同時に理解しつつ自分だけの視点を持つという両者の観点で見ることなどをはじめとして、様々な利点を教えてくれます。

とはいえ、一人よがりになれと言っているわけではなく、絆を全て打ち捨てて世の中を全否定しろというわけでもありません。

じゃあどうすればよいのか?それは次の章でお話します。

【絆】について

さてNテーマはもちろん【絆】についてです。

『反<絆>論』を読めば、絆が生み出すネガティブ側面を理解、あるいは「絆」という側面を無意識に肯定してしまっていることを自覚できるでしょう。

とはいえ、繰り返しますが、【絆】なんて持つなと言っているわけではありません。最後まで読めばわかりますが、最後の方で意外な形で著者独自の視点の【絆】が繋がっていきます。

【絆】という漢字は糸という文字が入っていますが、まさにちょうどこのイメージ通りといえます。誰か言われるままに結んで、結び型を変えて強めていき、そして絡まっていくと苦しくなってしまう。

ほどけるのが怖くて、そして解いた時に誰かに何を言われるのが怖くて、結び型がどのような形になろうと放っておいてしまうというのが大半の人がやりがちなことです。

もし、あなたが【絆】の独特の結び型を持ちたいのであれば、あるいは【絆】の苦しみから開放されたいのであれば、一度ほどける覚悟で、絆を結び直さなければなりません。世間の結び方ではなく、自分独自の人との繋がり方やあるいは自分の立ち位置を調整することで、心地よい空間を作るのです。

別の糸と結ぶか、それとももともとあったもので結び直すか……いずれにせよ、今までとは違う形で絆を結んでいく必要があります。

『反<絆>論』の著者の方の生き様そのものが、糸の結び型を考え続けた結果であり、そして、独自の絆の結び型を見つけた人の経験談となっていると思われます。

最後まで読めば、きっと誰かが利用している絆の力に流されず、むしろ自分だけの絆の力を得る手助けになるでしょう。

繰り返しますが、絆を全否定する本ではありません。むしろ既存の絆の在り方を見直し、新しく変えていく、”絆”のための本と言えるでしょう。

ちょこっとダメ出し

やや語気が強いところはありますね。あとどうしても1つだけ言いたい部分があります。文中で「いじめられっ子のほうが悪いという人がいてもいいんじゃないか」とマイナー勢的に語っていますが、それはマイナー勢じゃなくて、たまに議論になる程度にはややメジャー寄りです。

終わりに

ちょっと極端な方向にいる方であり、クレーマーのような雰囲気がないとは言い切れませんが、論理的できてないものはなく、人が無意識に目をそらしがちなものに目を向けさせてくれる本です。

また、哲学について様々な偉人の言葉を引用している部分もあり、興味が持てたらそちらも調べてみることをおすすめします。

絆、優しさ、同情、誇り……人が無意識に全肯定しがちなものなので、そして傷つけば誰かを傷つけている可能性を受け入れるのは並大抵のものではないでしょう。

しかし、もし現状でどうしても助けることができない誰か、あるいは貴方自身がそうであるのならば、常識的に信じてしまうものを疑ってみるのも大切なことです。

特に、私の経験論も踏まえての話ですが……

もし誰かが真剣に傷ついている様子を見て、「絶対にこの人のためになるから!!」「今はそうだけど、後で絶対感謝するから!!」みたいな、現在の行動を全肯定している部分があるならば、少しこの本を読んでブレーキをかけたほうがいいかもしれません。

その方はもしかしたら少数派であり、別のやり方が合っている可能性があります。極端に変える必要はありませんが、少なくとも完全になにかに固執したやり方をするのはやはり避けたほうが良いでしょう。

私も偉そうに語っていますが、やはり多数派に加わっていると心のどこかで嬉しさを感じてしまっています。

もう少し自重が必要なのかも知れません。


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『骨肉』

具体的に絆を否定している姉妹たちの物語です。

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