賛否両論渦巻き、進んでいるかもわからない学校の課題、部活動。今一度部活動の問題について俯瞰してみることが出来ます。 部活動の社会学 内田 良 編 p198(p210) 岩波書店

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皆様は部活動に関してはどのような思い出をお持ちでしょうか。

青春の1ページ、友との出会い、忘れない努力の結晶、あの頃一緒にいたのが私の妻です……

なんて方は多いのではないでしょうか?(最後に関しては流石に極稀だと思いますが)

とりあえず一つだけ。

はっきり申し上げますが、私は小、中、高、大と部活動に全くいい思い出がございません。とりあえず

「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい」

という感想以外頭に残っていません。

よし、言いたいことは言いました。次に言うことは一つです。

部活動が好きな方は申し訳ありませんでした。

お詫び申し上げま〜す

誠意のない)謝罪はさておき、私ほどではないにしても部活動に関してネガティブな印象を持つ方が増えてきているみたいです。

体罰、いじめ、結果主義、勝利至上主義、熱中症、そして今も問題になっているコロナによって部活動のあり方及び存在意義の矯正を見直すべきという声が増えてきているとか。

今までも部活動が問題になった事自体はあるのですが、原因の追求が個人、学校、広くても地域までの問題に留められており、部活動という概念そのものにスポットライトが当たったことは実は今まであまり見受けられませんでした。

そこで部活動そのものに焦点をあて、どのように部活がはじまり、どうして問題なのか。どこが問題なのか。どのように行っていくべきかといった疑問に答えた本がこちらになります。

安心してください。私と違って部活動への立場は極めて中立的です。そして本を紹介する以上、私も中立的に判断したいと思います。

王道で難解な説明、読むコツは?

お読み頂く前に一つ。

ガッチガチの学者の方ではないようですが、なかなか理にかなった説明をするみたいで、データ→分析結果→根拠→結論→まとめといった順に説明していきます。

しかし、データと分析結果が非常に難解です。私も正直3行読んだだけで「はい?」となりましたし、専門用語がオンパレードし、心が折れかけました。

わからない、もうだめだ……

という方もご安心を。ここさえ見なければ、あとの解説はわかりやすく、作者がどのような目線で部活動の問題点を見ているかがわかりやすくなります。

つまり、どういうことか。

章の反対から読んでいくのがオススメです。

まとめ→結論→根拠→分析結果→データといった形ですね。

狙っているのかというぐらい、まとめと結論がスッキリとしていて読みやすく、2つさえ読んでおけば、主張したい部分は大体わかると思います。ここから自分が求める部分まで掘り下げていきましょう。

さて、読み方がわかったところで本題に入りましょう。

部活が作用する問題

本題ですが、かなりのデータと多方面の分析によって、部活動の問題を引き起こす原因、傾向、状況、そして人の性質を解説していきます。

知れば知るほど、単純な犯人探しで解決する問題ではなく、部活の種類、教師の種類、地域、性別、考え方、そしてまさに今のコロナ事情などの状況にも変わってくる複雑な問題ということがわかります。

複雑に絡まることは悪い状況だけではなく、良い状況も生み出していること。そして、生徒も教師も向き不向きが生み出しているという当たり前のようで失念しがちな答えをデータから分析して導き出してくれます。

おそらく、一つ一つは問題として取り上げられることはあると思いますが、一気に様々な視点からとりあげたことはあまりないのではないでしょうか。

特に、学校の風潮や、教師の理念、あるいは生徒の特性などの問題が単体で議論されたことはあっても他の問題について考えたり、組み合わせるといったことは私も初めて読みました。

言ってみれば「部活動」という概念を見直すという本の主旨は伊達ではなく、今までどうしてもミクロの視点でしか見なかったことをマクロの視点で見ることができる本、と言っていいでしょう。

もちろん、ミクロの視点で見ることも大切ですけどね。

どっちかというと……

さて、この本ですが、今、部活動で悩んでいる子供や親、教師のための本というよりは、世間一般に広がる部活動のイメージを修正するための本、という印象が強かったです。

あまり、部活動に悩んでいる人、あるいは身近にそういった方がいる場合はどうしたらいいのか、という論点は語られませんでした。(このあたりはマクロ的な本では仕方ない部分でもあります)

しかし、全く役に立たないかというと、そうではありません。

マクロの視点を知ることで、立ち位置を把握し、ちょうどいい調整がしやすくなり、そうでなくても全体的な兆候や正しいかどうかは確実とは言えませんが、説得力のあるデータをもとに、生徒や教師を追い詰めることを阻止することが出来ます。

あくまでもこの本は部活動のネガティブ印象を抱く原因に対して、犯人探しをする本ではなく、部活動に関してどういう時にどういうことが起こりやすいのか、あるいはどういう人がどういう行動を取りやすいのか分析した本です。

現在部活動に直接携わっているか否か、現在の部活動に対して、ポジティブ派かネガティブ派か、そういった差別抜きで読めば、部活動に困っている人に直接助けられる鍵になる可能性を秘めていると思います。

少なくとも、私は不用意に部活動の犯人探しをするべきではないという結論に至りました。

総評

先程も述べましたが、真っ向に読んでいくとなかなか難しいので先にまとめから読んで、理由を深堀りしたい程度に合わせて逆から読んでいくのがオススメです。(全部左から右に読めといっているわけではないのであしからず)

社会学という名にそぐわず、何かと部活動において重要視されがちな感情論などを抜きにデータで冷静に分析するのは受け入れがたい人もいるかもしれませんが、中々に説得力があり、今までの問題、及び自分の部活動経験においても当てはまる部分がありました。(特に顧問の環境に関しては)

最も、過去を思い返した大人の立場だからこそ言えることで当事者である生徒はうまく、理解できないかもしれません。

岡目八目という言葉がありますが、外、すなわち部外者から問題を見つめることで解決できることもあり、部活動というポジティブに支配されがちな活動をわずかでも、ネガティブで見つめることは決して無駄ではないと思います。

今後、何か小さいことで部活動に悩んでいる人に対しては大きく部活動の世界を広げるように、そして部活動に対して大きな問題がどこかで起こった時は一つ一つの問題を細かく分析できるように。

視点の広狭、ポジティブネガティブ視点が自由自在になれば、より部活動の問題を解決、さらに進めば予防すらできるようになっていくでしょう。

要点へのヒント

作中でも言いましたが逆から読むのがオススメです。

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