若さは罪と言いますが、若くなろうとすることは一体何でしょうそれは手段でなければいけないはず。若返りの危うさを知ることができます。アンチエイジング 新堂 冬樹 p242(あとがきなし) 株式会社ポプラ社

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その他

オススメできる方

  • 若くなりたいと思う方全て。
  • 当に大切なものを見直したい方

今回よりあとがきなどのページ数に関わるので出版社も書くことにしました。

おどろおどろしい表紙からわかるように、最近明るめの物語が多かった中、久々の極ネガティブ本です。ちょっと性に関する描写もあるので、苦手な方はご注意ください。

アンチエイジングという言葉は皆様、ご存知でしょうか?若作りという意味にとられがちですが、「抗老化」、つまり老いるのを防ぐという意味みたいです。

女性に対して特に人気ですが、男性にもなかなか、需要があり、検索するだけでも数多くの関連商品が……

おっとっと。

あまり深く入りすぎると、怪しいショッピングブログになってしまいます。

残念ですが、おふざけは控えめにしましょう。

今回の物語は若さをテーマにしています。しかし、多くの人が欲しがるものは得てして高く付くものです。対価はお金だけではなく、もっと大切なものかもしれません。

もし、若返りたいと思ったり、昔の自分を取り戻したいと思った方がいましたら一つお聞きしたいです。

「若くなって何がしたいのですか?」

常に考えておかなければ、後悔するかもしれません。後悔は先立たないといいますが、取り返しすらできないほど大きなものを。

あらすじ

一人娘と旦那と暮らす、主婦、朝海は、二百四十万円という大金を欲しがっていました。アンチエイジングを行い、若返ることで、失いかけているものを取り戻すためです。

しかし、両親、友人、そして夫である孝昭にもお金を借りることはできませんでした。理由を話せば当然反対されると思っていたからです。彼女は消費者金融を、それも一社だけでは足りず、多くの会社を回り、お金を作るために歩き始めます。なんとか工面できたものの、理由をごまかすために家族ともギクシャクしていきます。

そして孝昭も、妻に対して年のことや体の衰えを指摘されることで若さに対して、執着を見せるようになっていきます。そして家族にも隠しているとある秘密が重なり、徐々に誘惑に身を委ねることになっていきます。

見失っていく何か、進めば進むほど戻れなくなっていく道、落とし穴だらけの人生、欲望と欲望が重なっていき、進んだ先にあるものとは……

そして夫婦が若さを求める理由は一体……。

すれ違い

物語は最初に、アンチエイジングを始めようとする朝海の描写、そして若さと美しさに執着していく朝海に言われてから若さ、というより年齢や自分の裏の感情を気にし始める孝昭につながっていきます。

二人の本来の目的は決して邪なものではなかったはずでした。しかし、目的はやがて言い訳になっていき、手段は別の何かに変わっていきます。

夫婦の仲は冷めていたわけではありません。最初の数ページで朝海ははっきりと「夫を愛している」と心情で語っています。夫もまた、妻と子供を大事にしていました。

しかし、お互いを想う気持ちが2つに分裂していきます。

本来夫婦なら、共存できるはずの「愛したい」と「愛されたい」が別れていき、そして、どんどんすれ違いに発展していくのです。

子供を置き去りにしながら。

夫婦の描写が交互の入れ替わることで、どんどんお互いの心の距離が離れていくことがわかり、恐怖と切なさが入り混じります。

つきまとうもの

読めば読むほど、物語はどんどん危険な予感を示していきます。

まるで綱渡りのような不安定さ、たとえゴールについたとしても、硬い地面などありません。もっと細くて心細い綱が待っているだけです。

なぜ自分がこんな綱を渡っているのか。自分は綱を渡ることが目的だったのか。

そんなはずはないはずです。冷静でいられたら、たとえ遠回りだったとしても、もっと硬くて安全な道を通りながら目的に向かって進むこともできたはずでした。

夫婦から冷静さを奪った「何か」は永遠と彼らをつきまといます。つきまといながら様々な悪いものを彼らに運んでいきました。本来なら簡単に避けたりあるいは助けを求めたりできるものなのに、つきまとわれているから逃げられません。

「何か」は本来はもっと高尚なもののはずでした。しかし、強すぎて危険ではないものなどこの世にはないのです。

総評

若さがテーマの物語ですが、決してポジティブな意味ではありません。

私はそもそも若いから何でも許されるみたいな風潮は大嫌いですし、もっと言うのならば若さを世間がそれほど大切にしていると思っていません。(私はその貴重な年を自分の努力に関係なく、何年失ったと思っているのでしょうか)

一方、やはり若さという力は大金を出しても買えないとまで言われているほど価値が高く、強いて金銭化するのならば途方も無い額になるのでしょう。

若ければいいと言って、誰にも会わず、何もしないのならば若さの価値が発揮されているとは思えません。つまり、若くなることはやはり理由があるはずです。

これは若さだけではなく、お金、命、力、権力と言ったものにも置き換えられます。あくまでこういったものは手段であり、目的ではないのです。

手段と目的が入れ替わることは失敗する原因の一つ、典型例と言えます。

ちなみに、こういった絶望だらけの本を紹介する理由は様々ですが、大切なものを一つあげます。

致命傷を避けるためです。

なんだかんだ言いながら、日本はやはり恵まれた国であり、他の国にはない魅力や優しさは多くあります。しかし、絶対な安全などありません。

いわゆる平和ボケと言われていますが、あまりに安全を盲信しすぎると、進む道が致命傷につながっていたとしてもそのまま突撃してしまう可能性もあります。

「アンチ・エイジング」のように絶望的な話は致命傷に繋がる道を理解できず、自分のリスクをはかれないことから始まりました。同じ人を出さないためにはどこまで自分が耐えられるか、あるいはリスクを背負えるのかをちゃんと考えることです。

人は確率の低いものを除外して行動する一方、信じたいものしか信じない、言い換えれば、信じたくないものは信じないという側面もあります。

「ここまでひどいことをする人はいない」とか「ここまで事態は悪くならない」と普段ならば信じていたほうが精神衛生上良いと思いますが、全く頭から除外してしまうといざ、最低の事態に出会ってしまった時に何もできなくなってしまいます。

だからこそ、たまにでいいので、ネガティブ全開の本を読んでおくことは大切なことなのです。

一番いけないのは「自分なら大丈夫」とか「自分はここまで愚かではない」と考えてしまうことですね。

とはいえ、教訓というにはあまりに悲しく、物語と考えるのはあまりにも身近で、そして助けたいかと言われればあまりに愚かな二人です。

読むには相応の覚悟が必要ですが、もし読み終えたのならば、心に深く刻まれた二人があなたを救う時が来るかもしれません。

要点へのヒント

彼らが大切だったもの、恐れているものを見つけてください。

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