テーマは「悪」そして「???」 本当にあった怖い話?怒りの話?結局悪いのって?「日本で一番悪い奴ら」監督 白石 和彌

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映画 その他
映画『日本で一番悪い奴ら』予告編
引用 日本で一番悪い奴ら

オススメできる人

  • 警察に絶対の安心感を抱いている人
  • 何かと「裏」の話が好みの方
  • 何があっても見届ける覚悟のある方

やや過激な性描写が多めにあります。ご注意ください

久々のドキュメンタリー映画です。ちょっと重たくて危ないお話です。

皆さんは警察についてどういった感情をお持ちでしょう。私は基本的には「大部分は立派であり、市民の憧れである職」といった印象です。

そう、「大部分」ということは少なくない「例外」がいるということでもあります。

最も、私は警察のお世話になるような人生は良くも悪くも……一応、良いという方向でいいのでしょうか?……まあとにかく送ってはいないので、実態はどうなのかはわかりません。

そんな世間知らずな私が今回紹介するのは、例外どころか一つの地域を覆い尽くしていた警察の闇、そして、翻弄とされつつも従っていた一人の刑事の物語です。

「警察に不信感を抱かせるために紹介しているわけではない」ということだけは強調しておきますね。

あらすじ

柔道の実力を買われて北海道警察として所属した諸星要一、しかし、なかなか成果が挙げられず、先輩刑事から貶される日々が続きます。

敏腕刑事で知られた村井定夫により、追っていた犯人を横から取られてしまいましたが、彼自身から慰めとともにアドバイスを受けます。

「悪とつながり、スパイをまけば、簡単に獲物をしとめられる」

教えを受けた諸星は柔道で鍛えた力をフルに活用し、ヤクザや暴力団、外国人などその他様々な人間を味方につけることで成果をあげていき、次第にエースと称され、まさに泣く子も黙るほどの男になっていきます。。

しかし、尊敬できる警部がいなくなり、歯止めが効かなくなった諸星は実績をあげるのに夢中になっていきます。そして熱はやがて組織全体に広がっていきます。

彼だけではなく、組織全体として動いていきます。警察という正義の看板にはそぐわない方法だったとしても……。

正義と欲望

いくら治安維持、国民の安全保障、悪の撲滅が仕事とはいえ、警察にもやはり、俗っぽい欲望はあるものです。むしろ競争社会を勝ち抜き、常日頃から戦いに身をおいている人たちだからこそ、競争の果てによくありがちな欲望を目指してしまうのかも知れません。

当作品にももちろん様々な欲望があります。金銭欲、性欲、権力、そして名誉欲が今作のテーマと言ってもよいかもしれません。

「金のためにやっているんじゃない!!名誉のためにやっているんだ!!」(※本編のセリフではありません)という言葉が、フィクションでも現実でもよくありますが、残酷な話ながら幸福を感じる感情としては金銭を得ることも名声を得ることもたいして違いはないようです。厄介なのはそういった幸福感はより良いものを求め、加熱していくということがあります。

諸星も最初は間違いなく、正義感に溢れていました。しかし、正義を示す手段に、正義の証を求めていき、次第に成果の証となり、そして名誉の証となっていき、得ることに手段を選ばなくなっていきます。

もはや、正義なのか欲望なのかわからなくなるほどに。

正義と裏

正義というものはなかなか単純なものではありません。

勧善懲悪という言葉がありますが、勧善は成果として結果を出すのが難しいのなら必然的に、懲悪の方に動いていくことになります。

たとえ手段が「悪」だったとしてもなしえたことが「善」だとしたら正義となるか否か。この手の題材はフィクションでもノンフィクションでも多くあります。

題材として、有名所だと「DEATH NOTE」という漫画などがそうですね(機会があったらそちらも紹介します)

警察が「強くて優秀」という称号だけで、人々が安心して暮らすことが出来、犯罪が減るというのならば、「成果を上げている」というのはたとえどんな過程があったとしても、そして、結果が偽りであったにしても社会全体のためにはなるのかもしれません。

しかし、効果のために法律として間違ったことを行い、そして誰かを不幸にしていたらやはり憎む人は増えるわけで、悪とみなされますし、偽りもまた、結局いつかは制御できなくなり、表へ飛び出してきてしまうものです。

個人的につくづく思うことがあります。

正義と欲望というものはスパゲティのスープと麺なみに非常によく絡むものです。

イカスミスパゲティのイラスト
黒いのは闇じゃなくてイカスミですよ?

戸惑い

もともと正義感が強かった諸星は、一歩悪の道へ進もうとするたびにやはり戸惑います。そして後半に向け、悪が絡んだ事件を担当している時のこと、後輩にある言葉を言われた時に、目に見えてわかるほど一番大きく動揺します。

自分が本当に求めていたものは何だったのか。正義は、正義の証を集めるだけのものだったのか。

しかし、諸星は振り切るように進んでいきます。もう作戦はやめられない戻れないというのもありましたし、名誉のためもあったのでしょう。そして失ったものに気づきつつもやはり手段は「悪」でも自分が「正義」であり、「エース」だったことをやめられません。

一方で戸惑わなかったものもありました。諸星は、正義の象徴や名誉以外のもので大切にしていたものはありました。彼がそれを守るために正義を名乗っていたかどうかはわかりませんが、一つ言えるのは単純で残酷な「悪」とは言い切れないということです。

総評

全編通してほぼ「悪」が絡むお話です。

もっとも「悪」が完全にネガティブとも限らないのが厄介なところですが。

「悪」というもっともシンプルにネガティブで、そしてどこか人を魅了する欲望について考えさせるお話でした。そして警察関係だと特に落差で「悪」というものの対処法を考えさせられます。

成果主義ではない「善」が評価されにくい部分もやはり当映画のような問題が起きてしまう理由なのでしょうか。まあ全くされていないということはないと思いますが。

ちなみにタイトルにも実は秘密があります。すごくわかりやすいタイトルであり、諸星は間違いなく「悪」という概念の存在ですが……まあ全部見たらわかります。

栄枯盛衰という言葉を警察に使っていいかわからないですが。権力も名誉も決して永遠ではありません。幸福を見つけたいならそれ以外の幸福を見つけることをよく推奨されますね。

「警察なら法をちゃんと守らなきゃ駄目!!」

「警察だったら常に絶対に正義のために行動しろ!!」

といった声は間違いなく多く、そして正しいです。

しかし、そういった方は次に上げる予定の記事を是非オススメいたします。

次は「正義」のお話をしましょう。

「悪」にも負けない強いネガティブを秘めた「正義」のお話を……。

余談

ピエール瀧さんがちょっと悪めの刑事役となっていますが、現実の末路を見てみると、ちょっと笑えない冗談ですね。

別にファンでもありませんが、なんというか……。

もう一つのテーマ

「隠れる」です

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