「引きこもりは諦めるしかない」そんなネガティブぶっ飛ばします!「父さんと死のう」 それは諦めではなく、覚悟の言葉 小説8050 著 林 真理子。

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おすすめできる人

  • ・いじめ問題をどこか甘くとらえる方
  • ・50・80問題に関する小説が読みたい方
  • 今、動けなくなっている方

皆さん、こんにちは。

本日は比較的、新しい本、そして、このブログの趣旨によく合っている本を紹介いたします。ちょっと苦しめのお話になるかもしれませんが、ぜひ、知っていただきたい物語です。

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小説8050 著 林真理子

この50と80の数字について嫌な感覚を覚えた方、正解です。最近、何かとニュースにもなりました5080問題についても大きくかかわっている小説です。

とはいえ、話の主軸はそこではなく、今も昔も変わらず問題になっている「いじめ」、そして「家族」が主なテーマといえる小説でしょう。

見所は、他人事のように感じてしまう一方、確実に存在する社会問題に対する圧倒的なリアル感と迫力、そしてわずかながらも希望をもって少しずつ進んでいく家族の話です。

あらすじ

決して経営状態がいいわけではない歯医者を営む大澤正樹。彼には三人の家族がいました。

従順に夫を支える妻、節子。

一流大学に通うほど優秀な能力持ち、結婚を控えている娘、由依

そして……。家族の悩みとなってしまっている、引きこもりになってしまった息子、翔太。

両親は、彼に対する期待による負担をかけさせてしまった罪悪感と、いつ暴力に走るかわからない恐れから強く出ることができません。

しかし、結婚を望む娘の言葉、近所にいた50歳の人間の悲惨な末路の中に、家族の未来を見た正樹は息子の問題に向き合うことを決断しました。

様々な引きこもりに関する企業に相談しましたが、お金ばかりとられ、さらに翔太からも強く反発されてしまい、より問題は悪化してしまいます。

しかし、息子と向き合い続けてきた結果、わずかに出た「いじめ」を思わせる言葉に、正樹は手掛かりを探し、そして、かつて自分が笑い飛ばした軽い問題こそが深刻な事態の全ての元凶と気づきました。

そして、彼は息子と共に過去を乗り越えるためとある手段で過去と戦うことを決意します。

しかし、父親は気づいてませんでした。

この戦いによって浮き彫りになる問題は決して息子だけの問題ではないことを。

「過去は取り戻せる」を別の意味で形にした

よく「過去を忘れなさい」や、「前だけを見て生きなさい」という教訓を聞きますが、人と言うのは過去にとらわれがちです。そもそもその言葉自体が「辛い過去に関わってもろくなことがない」という過去の経験に囚われているという矛盾を引き起こしています。

あまりにも傷が深すぎる過去は忘れることも、無視することもできません。過去に傷を負って「人は怖い」という考えを信じてしまったならば、もっと言うと学習してしまったのならば、現在や未来にそのまま繋がるのです。

現在という表面をいくら修正しようとしたとしても、根本である過去の教えが延々と体を侵食し、決して治せる問題ではありません。

そこまで深い問題になったら治すには過去を根源から修正する方法を現在でできる方法で探すしかないのです。

この物語は過去を強引になかったことにするのではなく、過去と向き合い、過去と話し、そして、過去を取り戻して前に進むための一つの希望の物語です。

この苦しみは簡単なものではない

5080問題、いじめ、教育問題、家族問題などが物語の中で出てきます。

特にこの本ではいじめについて「過去のことなんだから」「よくあることなんだから」と現実でもよくある言葉が非常に多く出てきます。

所詮は自己保身に走る嫌悪感しかわかない人たちの言葉なのですが、社会がそもそも「過去に囚われてはいけない」という理論を一定以上推奨しているので、このような言葉に打ち負けてしまい、自分が動けないのは自分が甘えているせいだとどこかで捉えるか、あるいは社会そのものに嫌悪感を抱いて一種の世捨て人になってしまうのです。

人が大きく動くのは大きな力が要ります。さらに人は可能な限り楽をしたがる生き物です。だからついつい問題を軽く見てしまい、時に取り返しのつかないことになってしまうのです。

事実、この物語でも、これ以上ないほど絶望している状況の中、かつて自分が見逃した問題で正樹は大きく後悔することになります。だからこそ、「信じられない」とか「どうせ」などと言う言葉で軽く見てはいけないのです。

心の傷は人によって違う

目に見えてわかる病気、例えば風邪などは対処法がかなり明確で限定されています。

多少人によって分かれるところはあると思いますが、大体は薬を飲む、体を休める、消化に良いものを食べる、など、多くの人が知っている普遍的な方法で治療できるでしょう。

しかし、心の傷はそうはいきません。

実際、物語の中で同じようにいじめにあったものの、克服し、最良とは言いませんが、ある程度の社会に貢献している人物も出てきます。

そして、彼は翔太に辛く当たります。

「自分はうまくいけたのにお前はできなかったのはお前のせいだ」(意訳)

もう一度言いますが、誰かが克服できたらからと言って同じ方法、さらによくあるような軽い方法で過去を克服できるとは限らない、というよりは限りなく可能性は低いといってもいいでしょう。

自分が知っている方法だったら必ずうまくいく、と主張するのは救済ではありません。ただの傲慢です。

総評

全体的に迫力のある本でした。翔太が大暴れしたり、家族の問題が浮き彫りになったときなど、その光景が目に浮かぶようです。

父親の目線で話が進みますが、父親の性格の問題で時に登場人物が置いて行かれていることに気づかないほどのスピード感とその後に迫ってくる恐怖が読者を飽きさせないアップダウンの激しい物語です。

私は父親になったことがないので、気持ちを理解できるなどは思いませんが、しかし、当たり前ながら息子だったことはあるので、少なくとも家族の苦しみを理解できたと思います。

過去を乗り換える一つの形として、全ての世代にお勧めできる本と言えるでしょう。

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