テーマは「真偽」 打算と愛情の間で彼女を見続けた孤高な紳士は最後に何をはかるのか。『鑑定士と顔のない依頼人』監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

スポンサーリンク
映画 その他
映画『鑑定士と顔のない依頼人』予告編
コメント欄でネタバレが多いのでyoutubeで見る場合はご注意を!!

オススメできる人

  • 大人の愛をみたい。
  • 初心な関係を観たい。
  • 何があっても見届けたい

映画を見れば……

「もう1回観たい映画だなあ」となります!!

最初に

真実か偽りか。

世の中においては重要視されているようでされていないような対比です。

某鑑定番組を見ていても、ブランドではない偽物の物やアクセサリーでもそれなりの値段がついたり、本物だったとしてもそれほど価値がなかったりと極論を言ってしまえば、金銭を度外視すると興味を持てない分野に関しては「どっちでもいいじゃん」となりがちです。

もっと言うのならば、小説や映画などはある意味、現実ではない「偽物の物語」なわけですが、決して無駄という人はいません。

大切なのは本人が納得するかどうかであり、本当の価値はやはりどこまでも人が決めるしかないのです。

人の付き合いや人生の経験においても同じことなのかも知れません。

さて、今回の物語です。

物の価値についてはどこまでも深く知って入るものの、とある事情から人間関係については全くわからない……というより、適切な回答がなかなか出せないクールな鑑定士の物語です。

果たしてこの愛は偽物か本物か……

あらすじ

クールで孤独を愛する鑑定士、ヴァージルは、オークションの司会から名指しの遺産整理の依頼まで様々な仕事をこなし、富も名声も手に入れた男です。

動いている女性と上手く話しかけられないヴァージルには変わった趣味がありました。女性の絵画を集めることで、そのためには画家であるビリーと協力してちょっと法律的にグレーなこともするほど熱心に取り組んでいます。

ある日、クレアと名乗る女性から変わった依頼が舞い込みました。

「とある事情で自分の姿は見せられないが、家の遺産を整理してほしい」(要約です)

契約書の作成をしたり、直接会って品物について話したかったのですが、何かと理由をつけて彼女はヴァージルに会おうとはしませんでした。やがて、彼女は広場恐怖症という障害を抱えており、家からはおろか、部屋からすら出ることが出来ないことを知ります。

姿を見せることが出来ない彼女、そして面倒そうな依頼に一度は断ろうと思ったヴァージルですが、彼女の家にとある歯車を見つけました。知り合いの技術士であるロバートによれば、古代の技術が関係している貴重な機械の部品であり、組み立てれれば大きな富となることを知ります。

打算的な関係から始まり、障害のせいで定期的にヒステリーを起こしては謝罪するクレアに対し、たびたびうんざりすることもあるものの、クレアのことを知っていくうちにヴァージルは彼女に惹かれていきます。

そして、二人の関係は次第に損得感情だけでは測れないものとなっていくのです。果たしてヴァージルが感じているこの愛は本物か偽物か……全く経験のない彼自身が鑑定していくことになります。

ぎこちない二人

そもそもなぜ、当ブログでこの作品を紹介したかというと、理由の一つとしては、ヴァージルもクレアも互いにどこか闇を抱えており、しかし、逆にその闇こそが二人の距離を近づけたという面に注目しました。

超一流の鑑定士であり、世間から見れば成功者であるヴァージルですが、女性経験皆無なので、クレアに対する反応はどこかぎこちないです。

一方でクレアも俗に言う引きこもり(仕事はしてますが)であり、外の世界をほとんど知りません。

ふたりとも、特にヴァージルは決して若くはない、というよりはかなり年齢を重ねていますが、恋愛に対してはどこまでも初々しいしく、「学生か!!」と突っ込みたくなるほどです。

一方で始まりが損得勘定だったりふたりともどこか人間不信の側面を持っているため、お互いに距離感がわからなかったりとなかなか物語も進みません。

ラブストーリーとしては王道的な進み方ですが、鑑定士と依頼人という仕事の関係から進展したというのは単純すぎ、紳士と淑女という言葉だけでは足りず、言ってみれば恋愛初心者同士の恋愛といったところでしょうか。

ぎこちなくても少しずつ進んでいく大人の恋愛が好きな方にはなかなか楽しめる過程となっております。

金か愛か

ものを鑑定し売る。

オークションで物の価値をわかりやすく説明する。

ヴァージルは別にお金の亡者というわけでもなく、多少気難しさを感じさせつつも非常に紳士的な人間である一方、彼の仕事は非常にお金に縁が深いものであり、クレアへの依頼も非常に打算的なものが強かったです。

しかし、彼女に惹かれていくうちに、金だけではどうにもならないことや、品々を鑑定したり、他人にアドバイスをするほど豊かな人生経験を持ってしても困惑するほど恋愛に対しては初心者でした。

女性関係に関してはかなり詳しいロバートにアドバイスをもらうものの相手の事情が複雑なのでうまくいかず、それでも必死に向き合い続けます。

物の売買のようにお金を出したら必ず見返りがあるとは限らない。

最初の目的ですら達成できなくなるかも知れない。

今までの地位をすべて失うかも知れない。

それでもヴァージルはやがて、クレアを一番に考えるようになっていくのです。

変わっていく世界

ヴァージルは次第に彼女に惹かれていきますが、決して良いことだけでは有りません。

彼女のことを心配するあまり、仕事で大きな失敗をしたり、障害のためか、突然ヒステリックになる彼女に困惑したりイライラしたりともどかしさを感じていきます。

彼のコレクションである女性の絵画とは違い、相手は生きている女性なので、当然ですが、鑑定のようにピシッとした答えを出せず、たびたび仕事仲間であるロバートやビリーに相談することになります。

彼らからの助言や作戦によりちょっと二人の関係も変わっていき、鑑定というお金と物だけの世界が変わっていきます。

そして彼は今までの世界を捨て、クレアだけではなくロバートやビリーとの関係すら変えていき、最後には自分のアイデンティティでさえ揺るがすほどクレアの存在がヴァージルを変えていくのです。

対価として彼が得るものは……世界は……どれほどのものなのでしょうか。

終わりに

「もう1度みたいなあ」と思いました。

ヴァージルはたびたびクレアとの関係で色々な失敗をするのですが、一番大きな失敗は見逃そうとしなければ見逃すことはなかったのかも知れません。「どうにもならなかった失敗」は、意外とどこかであきらめがつきますが、「どうにかできたかもしれない失敗」は引きずってしまうものです。

とはいえ、ヴァージルは絵画という一方的に愛することしか出来ない存在から逸脱し、生きている女性を愛するようになっていきます。決して良いことばかりでは有りませんが確実に前進はしています。

打算的な関係とちょっとずつ変わっていく関係……大人の恋愛の一つの側面をこの映画からと学んだような気がします。

すべてを見終わったあと、もう1度見てみると様々なことに気がつくことが出来るでしょう。

ヴァージルのように言ってみれば値段が付けられた品物の価値の根拠を知っていくようなものです。見終わって映画が気に入ったならばじっくりと鑑定してみましょう。

ぜひ、あなただけの評価をつけてみてください。

もう一つのテーマ

「作戦」ですね。ヴァージルは彼女との愛を貫くために協力者と様々な作戦をねっていきます。

……できればでいいですが、映画を見終わったあと、もう一度このページのこの部分を見に来てください。私が言えるのはそれだけです。

お詫び

ネタバレを全力で避けているのでもしかしたら当作品についてちゃんと話せなかったかも知れません。

もし、映画を見て想像と違った!!という方がいらっしゃいましたら先にお詫びします(ヒントはブログ中に残しましたが)

お問い合わせ

    その他
    akuroをフォローする
    ネガティブ・コントローラー

    コメント

    タイトルとURLをコピーしました